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EZH1/2 dual inhibitors suppress HTLV-1-infected cell proliferation and hyperimmune response in HTLV-1-associated myelopathy.

EZH1/2二重阻害剤によるHTLV-1関連脊髄症の病態制御:感染細胞増殖と過剰免疫応答の抑制

ジャーナル:Frontiers in Microbiology (Front Microbiol. 2023 Jun 12:14:1175762.)
著者:Akihito Koseki, Natsumi Araya, Makoto Yamagishi, et al.
責任著者:聖マリアンナ医科大学 脳神経内科
DOI: 10.3389/fmicb.2023.1175762. eCollection 2023.
URL: https://www.frontiersin.org/journals/microbiology/articles/10.3389/fmicb.2023.1175762/full

要約・インパクト

HAMは、HTLV-1感染を契機に、感染細胞に対する過剰な免疫応答が脊髄に慢性炎症をもたらす難治性疾患である。副腎皮質ステロイド治療が一定の効果を示す一方で、病態の根源にあるウイルス感染細胞を直接標的とする治療法は確立されていない。本研究では、遺伝子発現を司るエピジェネティック酵素EZH1/2に着目し、その阻害がHAM病態に及ぼす影響を解析した。
HAM患者由来のT細胞ではEZH2の発現が顕著に亢進しており、エピジェネティック異常の関与が明らかとなった。EZH2阻害剤はHAM細胞の自発的増殖を抑制し、さらにEZH1/2二重阻害剤はより低濃度で強力な抑制効果を示した。これらの阻害剤はHTLV-1感染細胞のアポトーシスを誘導し、プロウイルス量を低下させるとともに、抗炎症性サイトカインIL-10の産生を増強した。
本研究の意義は、HAM病態の二大要素である「ウイルス感染細胞の増殖」と「過剰免疫応答」を、エピジェネティクス制御という新たな治療概念によって同時に制御し得ることを初めて示した点にある。既存治療の限界を超え、HTLV-1関連疾患の根本的治療へとつながる新たなパラダイムを提示する成果である。

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