新着論文紹介
HTLV-1 bZIP Factor-Induced Reprogramming of Lactate Metabolism and Epigenetic Status Promote Leukemic Cell Expansion
HTLV-1 bZIP factorによる乳酸代謝とエピゲノム状態の再構築が白血病細胞の増殖を促進する
ジャーナル:Blood Cancer Discovery(2023年9月号)
著者:Kosuke Toyoda, Jun-ichirou Yasunaga, Takafumi Shichijo, et al.
責任著者:熊本大学大学院 生命科学研究部 血液・膠原病・感染症内科学講座
https://doi.org/10.1158/2643-3230.BCD-22-0139
要約・インパクト
本研究は、HTLV-1感染によって発症する成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)の病態形成において、ウイルスが宿主細胞の代謝とエピゲノムを再構築する分子機構を明らかにした。HTLV-1の主要な病原性因子であるHBZ(HTLV-1 bZIP factor)は、転写因子TAp73を誘導し、乳酸輸送体MCT1およびMCT4の発現を亢進させることで、細胞外への乳酸排出を促進することを見出した。TAp73の不活化により乳酸が細胞内に蓄積し、ATL細胞の細胞死が誘導されることから、この経路が腫瘍細胞生存に必須であることが明らかとなった。また、HBZはエピゲノム修飾酵素EZH2と結合し、そのゲノム上の局在を変化させることで、広範なヒストン修飾異常と遺伝子発現の変容を引き起こすことが判明した。さらに、TAp73はEZH2転写を正に制御し、代謝とエピゲノム制御が相互に強化されるループ構造が形成されていた。MCT1/4阻害薬シロシンゴピンはATL細胞の増殖を抑制し、この経路が新たな治療標的となり得ることが示唆された。HBZ-TAp73-EZH2による代謝・エピゲノム再構築はATLのみならず多くのがんに共通する機構である可能性がある。












