新着論文紹介

Establishment of a novel human T-cell leukemia virus type 1 infection model using cell-free virus

無細胞HTLV-1を用いた新規感染モデルの確立

ジャーナル:J Virol. (2024)
著者:Koh Nagata, Kenta Tezuka, Madoka Kuramitsu, et al.
責任著者:国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 次世代生物学的製剤研究センター
https://journals.asm.org/doi/10.1128/jvi.01862-23

要約・インパクト

ヒトT細胞白血病ウイルス1型 (HTLV-1) の主な感染様式は、感染細胞と標的細胞の接触を介した細胞間 (cell-to-cell) 感染である。生体内では遊離ウイルス粒子による感染は稀であり、HTLV-1キャリアの血清中には粒子を含むウイルス抗原はほとんど検出されない。一般的なHTLV-1感染実験では標的となる非感染細胞と感染細胞を共培養し、cell-to-cellで感染伝播させる共培養法が用いられる。しかしながらin vitro環境下では遊離ウイルス粒子によって初代リンパ球や樹状細胞に感染が成立すること、あるいは細胞膜上のバイオフィルムに含まれるウイルス粒子が感染伝播に寄与することが報告されており、これら無細胞HTLV-1を用いた効率的な感染モデルが確立できれば、HTLV-1の複製過程の解析や感染予防法の開発等に有用なツールとなる。
本研究では高効率のウイルス産生細胞株を用いて高力価の無細胞HTLV-1を獲得することに成功し、in vitroで様々な種類の細胞株および初代培養細胞に対して感染性を示すことを確認した。細胞外バイオフィルム様構造物は無細胞HTLV-1の感染性の維持に重要な役割を果たしていた。さらにヒト化マウスモデルを用いて、無細胞HTLV-1はin vivoでも感染性を示すことを実証した。本研究で確立した新たな無細胞HTLV-1感染モデルはHTLV-1感染のための実践的な供給源として有望である。

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