新着論文紹介

Whole genome CRISPR screening identifies molecular mechanisms of PD-L1 expression in Adult T-cell leukemia/lymphom.

全ゲノムCRISPRスクリーニングによる成人T細胞白血病/リンパ腫におけるPD-L1発現機構の解明

ジャーナル:BLOOD (2024)
著者:Chiba, M., Shimono, J., Suto, K., et al.
責任著者:北海道大学大学院 医学研究院 血液内科
https://doi.org/10.1182/blood.2023021423

要約・インパクト

成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)はHTLV-1感染者に発症する難治性腫瘍で、従来の化学療法への効果が乏しいことが知られています。近年のゲノム解析から、免疫逃避に関与する遺伝子変異やPD-L1発現上昇が一部症例で報告されてきましたが、その維持機構や治療介入の可能性は十分に解明されていません。本研究では、CRISPR-Cas9を用いたゲノムワイドスクリーニングによりATLLにおけるPD-L1発現制御因子を探索しました。その結果、STAT3が発現維持に必須である一方、NEDD化関連遺伝子群が抑制的に作用することを同定しました。実際に、JAK阻害薬ルキソリチニブによりSTAT3活性を低下させるとPD-L1は減少し、逆にNEDD化阻害薬Pevonedistatを投与するとSTAT3活性が亢進してPD-L1が上昇することを確認しました。さらにPevonedistatはATLL細胞に細胞周期停止やアポトーシスを誘導し、直接的な細胞障害効果を有することも明らかとなりました。興味深いことに、Pevonedistat処理によりPD-L1を高発現したATLL細胞は、抗PD-L1抗体や抗PD-L1 CAR-T療法の標的となりやすくなることが示されました。以上の結果は、PD-L1発現制御機構の理解を深めるとともに、ATLLに対する新たな免疫療法戦略の可能性を提示するものであり、今後の治療開発に資する知見と考えられます。

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