新着論文紹介

Clinical landscape of TP73 structural variants in ATL patients

成人T細胞性白血病リンパ腫におけるTP73遺伝子異常の臨床的意義

ジャーナル:Leukemia
著者:Hiroaki Hiramatsu, Rui Yokomori, Liu Shengyi, et al.
責任著者:石田高司(名古屋大学大学院医学系研究科、分子細胞免疫学) 
     三田貴臣(名古屋市立大学大学院医学研究科、血液・腫瘍内科学)
https://doi.org/10.1038/s41375-023-02059-9

要約・インパクト

我々はこれまでに、ATL細胞を用いた網羅的エンハンサープロファイリングによりTP73がスーパーエンハンサーによって制御される、ATL病態形成の主要な遺伝子の1つであることを報告した(Wong et al., Blood, 2017)。続く全ゲノム解析において、TP73遺伝子のスーパーエンハンサー領域に構造異常を同定し、それがエクソン2および3を含む欠失であることを明らかにした(TP73 structural variants; TP73 SV)。さらに、ATL細胞株にCRISPR/Cas9を用いてTP73 SVを導入したところ細胞増殖亢進を認め、当該構造異常が腫瘍化のdriver であることを示した(Ong et al., Leukemia, 2022)。

一方、我々はMIMOGA study(UMIN000008696)を通じて、モガムリズマブを用いた最適な治療法確立を目的とした研究を継続している。その過程で、モガムリズマブ治療を受けたATL患者のエクソーム解析を実施しCCR4、TP53、CD274(PD-L1)遺伝子異常が、それぞれ独立した有意な予後規定因子であることを明らかにした (Tanaka et al., Haematologica, 2022)。

今回の解析では(Hiramatsu et al., Leukemia, 2023)、同一コホートを対象としてTP73 SVの臨床的意義を検討した。その結果、TP73 SVは前述の3遺伝子異常と並び、独立した有意な予後不良因子であることを見出した。ATLの約13%に認めるTP73 SVは、現行のモガムリズマブ治療では克服が困難であり当該異常を有する症例に対する新たな治療戦略の確立が今後の重要課題である。さらに、TP73 SVは小細胞肺がんにおいても報告されているATLにおいてはTP73 SV形成にスーパーエンハンサーの関与が示唆されるが他のがん種を含めたTP73 SV形成機構の解明は、腫瘍細胞の分子進化機構の理解を深めるであろう。

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