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The retrovirus HTLV-1 inserts an ectopic CTCF-binding site into the human genome
HTLV-1によるヒトゲノムへの異所性CTCF結合部位挿入

ジャーナル:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (2016)
著者 Satou Y, et al.,
所属 熊本大学大学院先導機構
http://www.pnas.org/content/113/11/3054.abstract

要約

  • レトロウイルス感染の特徴は、ヒトが元々持っているDNAに外からのウイルスDNAが組み込まれて一体化し、簡単には見分けが付かなくなることにある。そのため、ヒトのDNAに組み込まれたウイルスDNA(プロウイルス)は、ヒトの免疫や抗レトロウイルス薬から逃れる事が出来るようになり、感染者体内からのウイルス排除を目指した治療の大きな障壁となっている。今回の研究では、HTLV-1の持続感染において、プロウイルスが維持されるための新たな仕組みが解明された。
  • 本研究では、CTCFといわれる細胞由来のタンパク質がヒトのDNAと一体化したHTLV-1プロウイルスに直接結合し、持続感染を促進するようにウイルス遺伝子の発現を調節している事が明らかとなった。もともとCTCFという分子は、ヒトのDNAを立体的に折りたたんで多くの遺伝子の働き方を決める機能があり、私たちの生命活動に欠かせないタンパク質であることが知られている。つまりHTLV-1というウイルスは、宿主であるヒトの免疫監視機構から逃れる手段として、ヒトのDNAと一体化するだけでなく、細胞がもともと持っている「DNAを折りたたむ仕組み」も利用することで、感染者体内で巧妙に生き延びていると考えられる。

インパクト

これまでの研究でATL細胞のHTLV-1プロウイルス発現において、センス鎖は抑制、アンチセンス鎖は活性化というパターンをとっている事が明らかにされている。これは宿主免疫監視機構からの逃避の結果と考えられているが、どのような仕組みでその転写パターンが形成・維持されるかについては、不明な点が多く残されていた。 本研究は、そのプロウイルス転写制御メカニズム、つまりはHTLV-1の持続潜伏感染の新たなメカニズムを明らかにするものと考えられる。今後更なる研究の進展によって、現在難治性白血病である成人T細胞白血病の予防や分子標的治療に繋がる成果と考えられる。

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