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Integrated molecular analysis of adult T-cell leukemia/lymphoma
ATLの包括的分子解析

ジャーナル:Nature Genetics, (2015)
著者 Kataoka K, et al.,
所属 京都大学大学院医学研究科
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26437031

要約

ATLはHTLV-1感染によって引き起こされる末梢性Tリンパ球の腫瘍であるが、発がんメカニズムの遺伝的基盤には不明な点が多く残されていた。426例のATL症例に対して全ゲノムシークエンス、エクソーム、トランスクリプトーム、メチレーション解析を行い包括的な分子生物学的研究を行った。同定された変異は、T細胞受容体-NFκB経路、T細胞輸送、免疫監視機構などのTaxが関連する分子・経路に多く認められた。他の特徴としてPLCG1, PRCKB, CARD11, VAV1, IRF4, FYN, CCR4, CCR7などで活性化型変異が多く認められ、また、CTLA4-CD28, ICOS-CD28などの融合遺伝子が検出された。IKZF2, CARD11, TP73の欠失、GATA3, HNRNPA2B1, GPR183, CSNK2A1, CSNK1A1の変異も多く検出された。この研究はT細胞シグナルの分子機構に新たな視点を与えるだけでなく、ATLの診断・治療にも有用な情報をもたらすものである。

インパクト

本研究ではATLの統合的・網羅的なゲノム解析により、初めてその全体像を明らかにしている。ATLでは他の血液腫瘍と比較しても変異数が多いことが明らかになった。HTLV-1感染からATL発症に至るまで長期の潜伏期間が必要なことが知られているが、これはATL発症までに多くの遺伝子変異・転座が蓄積する必要があるからであろう。HLA抗原の欠失・変異など免疫監視機構関連遺伝子の変化は、ウイルスという外来病原体による発がん過程において宿主免疫機構からの逃避が重要であることを示している。本研究によりATL細胞におけるゲノム変化の全体像が明らかとなり、その発がん機構の解明が大きく進んだ。今後の治療法開発にも繋がる成果であると言える。

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