新着論文紹介

Standardization of Quantitative PCR for Human T-Cell Leukemia Virus Type 1 in Japan: a Collaborative Study.
HTLV-1核酸定量の標準化:多施設共同研究

ジャーナル:Journal of Clinical Microbiology (2015)
著者 Madoka Kuramitsu, et al.
所属 国立感染症研究所 血液・安全性研究部
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26292315

要約

HTLV-1定量PCR (qPCR)は、宿主の血液細胞のゲノムへ挿入されたHTLV-1プロウイルス量を測るため用いられる。高プロウイルス量がATLやHAM発症の危険因子の1つであることが明らかになったが、プロウイルス量の測定値には施設間差があり、施設間での評価が困難であった。本研究では、多施設共同研究にてHTLV-1定量PCRの標準化を試みた。具体的にはHTLV-1ゲノムを有するTL-Om1細胞を用いた標準品により正確な測定が可能になるか検討した。TL-Om1標準品の理論値と各施設の測定結果から、各施設の相対比を算出した。相対比は、0.84倍から4.45倍となった。この相対比を用いて、各施設の臨床検体の測定結果を補正したところ、補正前7.4倍の施設間差は3.8倍まで半減した。HTLV-1 qPCRは、TL-Om1細胞を標準品として使用し、施設毎の理論値からの相対比で補正することで標準化可能であると考えられた。

インパクト

これまでそれぞれの施設で測定したプロウイルス量を他の施設の結果と比較することは、施設間差があるため困難であったが、TL-Om1細胞で作製した標準品を用い、相対比による補正によって、測定結果を理論値へ近づけることが可能となった。またその結果として施設間差が縮小し、施設を超えたプロウイルス量の評価が可能となることが明らかになった。
本研究の成果のHTLV-1定量PCRの標準化によって、一層高い精度でプロウイルス量の評価が可能になり、ATLやHAM等の正確な発症危険予測や病態管理が可能となると期待される。

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