新着論文紹介
Identification and tracking of HTLV-1-infected T cell clones in virus-associated neurologic disease
HTLV-1関連脊髄症におけるウイルス感染T細胞クローンの特性解析
ジャーナル:JCI Insight
著者:Satoshi Nozuma, Eiji Matsuura, Masakazu Tanaka, et al.
責任著者:鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 神経病学講座 脳神経内科・老年病学分野
https://insight.jci.org/articles/view/167422
要約・インパクト
HTLV-1関連脊髄症(HAM)は、HTLV-1に感染したT細胞が体内に残存・増殖することで発症する神経炎症性疾患である。本研究では、HTLV-1感染細胞に着目し、TCRレパトア解析を用いて、HAM患者の体内に残存し、中枢神経に浸潤するHTLV-1感染細胞の特性を明らかにした。その結果、HAM患者およびHTLV-1キャリアでは、感染T細胞が非感染T細胞に比べて高度にクローン増殖していることが判明した。縦断的解析では、HTLV-1感染細胞のTCRレパトアは一定であり、高度に増殖した感染細胞クローンがHAM患者の体内に長期間保持されていることが示された。また、増殖したHTLV-1感染細胞の分布は髄液と末梢血で異なり、特にHAM患者の髄液中でより高度な増殖が認められた。さらに、クラスター解析の結果、HTLV-1感染細胞のTCR配列には類似性があり、共通の抗原刺激による増殖が示唆された。本研究の結果から、HTLV-1感染細胞のTCRレパトア解析により、個々のクローン細胞の動態を解明し、中枢神経内で増殖する病原性クローンの同定が可能になることが期待される。