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Vaccination with short-term-cultured autologous PBMCs efficiently activated STLV-1-specific CTLs in naturally STLV-1-infected Japanese monkeys with impaired CTL responses.

STLV-1特異的CTLの低応答性を示すSTLV-1自然感染ニホンザルに対する自家末梢血単核球の免疫接種によるCTL応答の回復

ジャーナル:PLOS Pathogens (2023)
著者:Hasegawa A, Murata M, Fujikawa T, et al.
責任著者:東京医科歯科大学、他
https://doi.org/10.1371/journal.ppat.1011104

要約・インパクト

成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)患者では、抗ウイルス/腫瘍免疫の担い手であるHTLV-1特異的細胞傷害性T細胞 (CTL)応答が早期から減弱しており腫瘍の助長因子となっている。一方、HTLV-1感染者の末梢血単核球(PBMC)では感染細胞のHTLV-1抗原発現レベルが非常に低く、in vitroで培養すると急激にウイルス発現が増大することが知られている。著者らは、培養後にHTLV-1抗原を発現した自家PBMCが、HTLV-1特異的CTL応答を強化する免疫原となり得るのではないかとの仮説を立て、霊長類モデルを用いてこの可能性をin vivoで検証した。
ニホンザルは、HTLV-1の近縁ウイルスであるSTLV-1に高率に自然感染しており、ヒトHTLV-1感染者と同様、分離直後のPBMCにはウイルス抗原は検出されないが短期培養により発現が誘導される。また、STLV-1特異的CTL応答は感染サルの大部分で保たれていたが少数の個体では減弱していた。そこで、CTL応答の低い個体を対象に、短期培養した自家PBMCにmitomycin C処理したものを抗原としてワクチン接種実験を行った。この結果、ワクチン接種後3〜4ヶ月をピークにSTLV-1特異的CTLが著明に活性化し、CTL活性の増大時にプロウイルス量の減少が認められた。ヒトHTLV-1感染者については今後更なる検討が必要であるが、少なくともSTLV-1自然感染ニホンザルモデルにおいては、ウイルス抗原を発現した培養自家PBMCがCTL応答を活性化させるワクチン原として働き得ることが実証された。

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