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The oncogenic driving force of CD30 signaling-induced chromosomal instability in adult T-cell leukemia/lymphoma

成人T細胞白血病リンパ腫におけるCD30シグナルを介した染色体不安定性の誘導機構

ジャーナル:Cancer Science
著者:Makoto Nakashima, Atae Utsunomiya, Toshiki Watanabe, et al.
責任著者:聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター 病因病態解析部門
https://doi.org/10.1111/cas.15706

要約・インパクト

成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染に起因する極めて悪性度の高い血液腫瘍である。一部のATL症例では膜タンパク質CD30が異常に高発現しており、CD30を介したシグナル伝達はATL細胞の増殖を促進させる。本研究は、CD30シグナルがATL細胞の腫瘍化メカニズムに関与すると仮説を立て、その生物学的意義を検証した。その結果、CD30リガンド(CD30L)との結合により活性化されるCD30シグナルは、活性酸素種(ROS)の産生を亢進させ、DNA二本鎖切断を誘導することで、HTLV-1感染細胞およびATL細胞に染色体レベルでの変異を引き起こすことを明らかにした。CD30シグナルは抗アポトーシス活性および細胞増殖活性を誘導するため、染色体変異が蓄積されやすい細胞内環境を形成し、腫瘍細胞の進展に寄与する可能性が考えられる。本研究は、CD30陽性ATLの病態解明に貢献すると同時に、CD30陽性リンパ腫全般における腫瘍形成機序の理解を深める重要な知見を提供している。

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