新着論文紹介
Dual targeting of aberrant DNA and histone methylation synergistically suppresses tumor cell growth in ATL
ATLにおけるDNAとヒストンのメチル化異常を標的とした併用治療による相乗的な抗腫瘍効果
ジャーナル:Blood advances
著者:Yuki Kurahashi, Tatsuro Watanabe, Yuta Yamamoto, et al.
責任著者:佐賀大学 医学部 創薬科学共同研究講座
https://doi.org/10.1182/bloodadvances.2022008362
要約・インパクト
ATLの発がんにおいて、HTLV-1感染細胞、あるいはATL細胞に、エピゲノム異常が蓄積することが知られており、ヒストンH3のリジン27トリメチル化(H3K27me3)を触媒するEZH1/2に対する分子標的薬(valemetostat)が近年、再発又は難治性ATLの治療法として承認されている。一方、我々はDNAのメチル化亢進異常に注目し、新規経口DNA脱メチル化薬として開発中のOR-2100について、抗ATL効果を報告している(Blood 136:871-884, 2020)。本論文では、EZH阻害薬とDNA脱メチル化薬の併用が、それぞれの単剤処置に比べて、より強い抗ATL効果を発揮することを明らかにした。この併用はATL細胞において、強い遺伝子発現の変化を誘導し、ERK特異的ホスファターゼであるDUSP5遺伝子は強く発現亢進した。興味深いことに、HTLV-1感染細胞、あるいはATL細胞においてDUSP5遺伝子発現は抑制されており、強制発現により細胞増殖が抑制された。以上の結果より、我々はヒストンとDNAのメチル化異常を標的とした併用治療はATLの治療成績を向上させるものと期待している。