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Polycomb-dependent epigenetic landscape in adult T-cell leukemia
ATL細胞のエピゲノム異常の実態

ジャーナル:Blood (2016)
著者 Fujikawa D, et al.
所属 東京大学大学院 新領域創成科学研究科
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26773042

要約

ATL細胞の様々な遺伝子発現異常、microRNA発現異常が明らかにされてきたが、その原因となるエピジェネティック異常の全貌は明らかにされていなかった。本研究では、急性型3症例及び正常T細胞のヒストンのメチル化パターンを網羅的に解析し、さらに遺伝子発現解析データとの統合によって、ATLのエピゲノム異常とその重要性を明らかにした。ATL細胞の半数の遺伝子座においてヒストンH3K27のトリメチル化(H3K27me3)が異常に蓄積しており、ATL細胞特異的な発現抑制を引き起こしていることがわかった。これには多くのがん抑制性遺伝子やmicroRNA群、さらにエピジェネティック調節因子や転写制御因子が多数含まれており、ATL細胞に独特の遺伝子調節機構の存在が示唆された。また興味深いことに、HTLV-1 Taxがポリコーム群と相互作用し、宿主エピゲノムを変化させることがわかった。Taxによって不死化したT細胞はATL細胞に似たエピゲノムパターンを持つことから、Taxによる腫瘍化のメカニズムの一端が明らかになった。

インパクト

本研究の成果により、ATL細胞の発生と悪性化を引き起こす特徴的な遺伝子発現異常の背景が一部明らかにされた。ポリコームによって蓄積するH3K27me3が原因で起こる発現抑制の多くはくすぶり型及び慢性型ATLでも見られる一方、急性型への進展とともにその抑制が強くなることから、エピゲノム異常がATL細胞の発生初期から後期過程にかけて広く関わることが示された。エピゲノムは可逆的であり、ポリコーム群を制御することにより発現抑制を解除できる。これは新たな治療戦略を考える上で極めて重要な性質である。ポリコームを分子標的とする治療薬が、ATL細胞だけでなく、HTLV-1感染細胞をも除去できる可能性があり、今後のさらなる開発研究が期待される。

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