ごあいさつ

東京大学の渡邉より、第6回の「HTLV-1研究会」の開催にあたりHTLV-1研究会会長としてご案内申し上げます。

 ご承知の様に、2010年末に当時の菅首相のイニシアチブで「HTLV-1総合対策」が決定され、2011年から、全国一律に妊婦のHTLV-1抗体検査が開始されました。厚生労働省では「HTLV-1対策推進協議会」が設置され、これまで4回の会議が開催されております。また、HTLV-1母子感染対策協議会の設置、HTLV-1母子感染関係者研修事業、HTLV-1母子感染普及啓発等のHTLV-1母子感染対策事業などの取り組みが各自治体で進められております。更に、平成23年度からは厚生労働科学研究費の中に「HTLV-1関連疾患研究領域」が設定されたこともご承知の通りです。昨年度はこの研究領域で26の研究事業が採択されて研究が進められております。昨年末の政権交代により、この様な医療対策と研究事業の推進体制の継続が危ぶまれましたが、最終的には「HTLV-1総合対策」は政府の方針として継続されることになっております。この様な状況でございますので、今後とも「総合対策」の推進にご協力を頂けます様お願い申し上げます。一方、「HTLV-1関連疾患研究領域」の研究事業は、HTLV-1に関連する基礎から臨床までの研究の活性化に大きく貢献していることが明らかです。しかしながら、大多数の研究事業の研究期間が平成25年度までとなっており、平成26年度以降におけるこの研究体制の継続が大きな課題となっております。

 この様な背景のなかで、当研究会の役割はますますその重要性を増して来ていると思います。当研究会は、幅広い領域の基礎から臨床までの研究者や医師が一同に集まり、研究成果の発表と情報交流を行う国内で唯一の場となっております。当研究会での研究発表や情報交換、関係者の交流が、HTLV-1に関連した様々なレベルでの研究活動の活性化につながることを期待しております。第6回目の開催となります本年は、昨年と同様に、厚生労働科学研究費の研究班との共同で、「ATLシンポジウム」と「HTLV-1国際シンポジウム」を開催致します。基礎から臨床までの第一線の国内外の研究者からまとめて研究成果の発表をして頂くことは、国内の研究推進に貢献すると同時に、国際的な共同研究へのきっかけとなることも期待されます。このような形で併催し、便宜を図ることが可能となりましたことにつきましては、関係各位のご協力の賜物であり、ここに改めてお礼を申し上げます。

 HTLV-1感染とその関連疾患の領域では、公衆衛生、疫学、臨床および基礎研究のいずれにおきましても、まだまだ多くの解決すべき課題が残されております。昨今の様に、社会的な注目度が高まり、行政側の対応も大きく変化して来たこの機会に、研究を更に発展させて、感染の予防と疾患の発症予防・治療に繋げることが期待されていると考えます。従って、我々研究者および臨床家の責任はさらに重大であると、気持ちを引き締めております。当研究会の継続的な活動を可能にするために、法人化を行い「学会」とすることが検討されております。学会となりました場合もこれまで同様に皆様のご協力を頂けます様、お願い申し上げます。

 最後になりますが、関係各位におかれましては、第6回HTLV-1研究会に積極的にご参加頂き、研究成果の発表と情報交換の場として有意義な時間を過ごされますこと事を期待しております。

HTLV-1研究会
会長 渡邉俊樹